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東京地方裁判所 平成8年(ワ)1355号 判決 1996年10月29日

原告

株式会社東京三菱銀行

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

太田忠義

柴田龍彦

岸本寛成

被告

恒大産業株式会社

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

森荘太郎

中村紀夫

主文

一  被告は、原告に対し、二八九四万四五一二円及びこれに対する平成八年二月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

三  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

主文第一項と同旨

第二事案の概要

本件は、中華人民共和国の売主から冷凍鶏肉を輸入する買主の取引銀行である原告が、その依頼を受けて商業信用状を発行し、売主の取引銀行に手形金を支払って荷為替手形とその付属書類である船荷証券等を所持するに至ったものの、買主の破産により荷為替手形の手形金相当額等の支払を受けることができなくなったため、売主との間で右冷凍鶏肉の海上運送契約を締結し、船荷証券を売主に交付して我が国まで運送して右冷凍鶏肉を荷揚げした運送人である被告に対し、被告が買主に対しその破産前にいわゆる保証渡しの方法により船荷証券と引き換えることなく運送品を引き渡したことによって運送品の引渡債務が履行不能となり、これによって損害を被ったとして、その賠償を請求した事案である。

一  争いのない事実等(証拠によって認定した事実については括弧内に証拠を摘示する。)

1  被告は、国際海上運送等を業とする会社である。

2(一)  中華人民共和国の遼寧省食品輸出入公司(LIAONING FOOD-STUFFSIMPORT&EXPORTCOR-PORATION)は、平成七年一月ころ、大市物産株式会社に対し、別紙船荷証券目録≪省略≫一ないし三記載の各数量の冷凍鶏肉を売り渡し、その引渡しのために、被告との間で、同目録一及び二記載の運送品については陸揚港を東京とし、並びに同目録三記載の運送品については陸揚港を大阪として、右各冷凍鶏肉についての船舶による各物品運送契約を締結し(以下「本件(大連船積)各海上物品運送契約」という。)、被告は、平成七年一月二八日及び同月二九日、大連において、同目録一及び二記載の各運送品並びに同目録三記載の運送品をそれぞれ船積し、運送人として、荷送人である遼寧省食品輸出入公司に対し、同目録一ないし三記載の各船積船荷証券を交付した。

(二)  中華人民共和国の上海大江(集団)股有限公司(SHANGHAI DA-JIANG (GROUP) STOCK CO.,LTD.)は、平成七年一月ころ、大市物産株式会社に対し、別紙船荷証券目録四記載の数量の冷凍鶏肉を売り渡し、その引渡しのために、被告との間で、陸揚港を大阪として右冷凍鶏肉についての船舶による物品運送契約を締結し(以下「本件(上海船積)海上物品運送契約」という。)、被告は、平成七年二月二八日、上海で右運送品を船積し、運送人として、荷送人である上海大江(集団)股有限公司に対し、同目録四記載の船積船荷証券を交付した。

3(一)  遼寧省食品輸出入公司は、荷為替手形をバンクオブチャイナリャオニン(LIAONING)支店で買い取ってもらい、その後株式会社東京銀行(平成八年七月二日原告に合併された。以下「東京銀行」という。)は、信用状に基づき、バンクオブチャイナに対し荷為替手形の支払を行い、荷為替手形の付属書類である別紙船荷証券目録一ないし三記載の各船積船荷証券及び各商業送り状を所持するに至った(原告が≪証拠省略≫の原本を所持している事実、弁論の全趣旨)。

(二)  上海大江(集団)股有限公司は、荷為替手形を東京銀行上海支店で買い取ってもらい、その後東京銀行大阪支店は信用状に基づき東京銀行上海支店に対し荷為替手形の支払を行い、荷為替手形の付属書類である別紙船荷証券目録四記載の船積船荷証券及び商業送り状を所持するに至った(原告が≪証拠省略≫の原本を所持している事実、弁論の全趣旨)。

4(一)  別紙船荷証券目録一及び二記載の各運送品は平成七年二月八日東京港に到着し、同目録三記載の運送品は平成七年二月六日大阪港に到着した。また、同目録四記載の運送品は平成七年三月七日大阪港に到着した。右各運送品はいずれも右各到着日に荷揚げされた。

(二)  被告の代理店である大東港運株式会社は、大市物産株式会社又はその代理店三協運送株式会社に対し、別紙船荷証券目録一ないし三記載の各運送品については右各到着日にこれらを引き渡し、同目録四記載の運送品については平成七年三月八日これを引き渡した。この引渡しは、別紙船荷証券目録一ないし四記載の各船荷証券(以下「本件各船荷証券」という。)と引換えにされたのではなく、後日船荷証券を入手次第これを運送人に引き渡す旨を約した保証状を差し入れさせて船荷証券なしに運送品を引き渡す、いわゆる保証渡しの方法で行われた(弁論の全趣旨)。

5  原告は、平成七年二月一六日別紙船荷証券目録一ないし三記載の各船荷証券を入手し、同年三月二〇日同目録四記載の船荷証券を入手した(弁論の全趣旨)。

6  大市物産株式会社は、平成七年三月二九日破産宣告を受け(破産宣告申立ての日は同月一六日である。)、原告に荷為替手形の手形金相当額等の費用償還債務を履行することができず、本件各船荷証券を入手できなかった。本件各船荷証券は原告が所持したままである(原告が≪証拠省略≫の原本を所持している事実、弁論の全趣旨)。

二  争点

1  被告の代理商(代理店)である大東港運株式会社が、大市物産株式会社等に対し、いわゆる保証渡しの方法により船荷証券と引き換えることなく別紙船荷証券目録一ないし四記載の各運送品(以下「本件各運送品」という。)を引き渡したことについて、被告に運送人としての責任があるか。

2  原告は、本件各船荷証券に基づく本件各運送品の引渡請求権を本件各運送品の到着後長期間行使しなかったものであり、これは、原告が本件各船荷証券と引換えではなく本件各運送品を引き渡すことにつきあらかじめ承認していたか、これを黙認していたからにほかならないとして、原告の右引渡請求権は、権利の放棄により消滅したといえるか。あるいは原告が長期間経過後に当該権利を行使するのは権利の濫用であり、信義則に反するといえるか。

3  過失相殺

原告には損害の発生防止及び軽減のための適切な手段を講じなかった過失があるか。

三  争点1についての当事者の主張

1  被告

大東港株式会社が大市物産株式会社に対し本件各船荷証券と引換えではなく本件各運送品を引き渡したことは、大東港運株式会社の独自の責任と判断によってされたものであり、被告の意思に全く反したものであったから、被告にはその引渡しについて責任はない。すなわち、

(一) 代理商(代理店)は特定の商人のために継続的にその営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする独立の商人であり、使用人ではなく、独自に利益、危険の計算を行う存在であるから、代理商を本人の単なる履行補助者と同視することは誤りである。本人は、自らに故意又は過失がない限り、代理商が本人の意思から解放されて自由な立場で独自に判断して行った行為について責任を負うものではない。

(二)(1) 大東港運株式会社は、港湾荷役業者の中では大手の優良企業であり、小規模な同族会社にすぎない被告よりも取引上優位に立っており、被告との取引開始に当たって、船荷証券と引換えではなく運送品を引き渡す業界慣行があることを理由に、その取扱いを承認するよう強く要請した。被告は、やむを得ず、買主から銀行の発行する保証状又は最低限買主の発行する保証状を差し入れさせることを条件とし、かつ、買主が丸紅、伊藤忠商事等の大手九大商社の場合に限って右取扱いを承諾した。

(2) 被告は、破産宣告の約二箇月前である平成七年一月二四日に大市物産株式会社の経営状態が危険であるという情報を入手し、念のため大東港運株式会社に対し大市物産株式会社に対する運送品の引渡しについて注意するよう警告した。大東港運株式会社は、右の警告を無視し、かつ、被告との前記の基本合意に反して、本件各船荷証券と引換えでなく本件各運送品を大市物産株式会社に対して引き渡してしまったのであり、これは、被告の意思に反して独自に判断して行った行為というべきであるから、被告に責任はない。

2  原告

被告は、代理商(代理店)である大東港運株式会社との関係いかんにかかわらず、船荷証券上の義務を免れることはできない。

四  争点2についての当事者の主張

1  被告

原告は、本件各運送品の到着後本件各船荷証券を入手してから、平成八年一月一七日に至って被告に損害賠償を請求するまでの約一一箇月間、本件各船荷証券に基づく本件各運送品の引渡しを全く請求してこなかった。これは、原告が、本件各船荷証券と引換えではなく本件各運送品を引き渡すことにつきあらかじめ承認していたか、これを黙認していたためであると考えられるから、原告の本件各船荷証券に基づく本件各運送品の引渡請求権は、権利の放棄により消滅したものというべきである。よって、原告の損害賠償請求権は存在しない。

仮にそうでないとしても、本件各運送品の引渡後約一一箇月経過してから損害賠償請求権を行使するのは権利の濫用であり、信義則に反する。

2  原告

船荷証券の所持人は、たとえ慣行としていわゆる保証渡しが行われることがあることを知っていたとしても、それゆえに船荷証券が表象する引渡請求権を放棄する意思を有しているということはできない。

国際海上物品運送法一四条によれば、運送品に関する運送人の責任は、運送品が引き渡された日から一年以内に裁判上の請求がされないときは消滅すると定められている。この規定の趣旨は、運送品に関する運送人の責任の有無を早期に確定させることにあるから、一年以内に裁判上の請求を行っておけば足りるのであり、約一一箇月間請求しなかったからといって、損害賠償請求権が消滅したり、その行使が権利の濫用となったり、信義則に反することにはならない。

五  争点3についての当事者の主張

1  被告

原告は、本件各船荷証券を受領後、大市物産株式会社に対し速やかに本件各船荷証券の引取りを求め、荷為替手形の支払に基づく償還請求権の回収を図るべきであった。原告は、このような措置を執っていれば、大市物産株式会社がいつまでたっても船荷証券を引取りにこないことを不審に思い、必要な調査をして本件各運送品が既に大市物産株式会社に引き渡されていることが分かったはずであり、その時点で直ちに債権保全の措置を執っていれば、損害は回避されたはずである。

本件各運送品のような食料品貨物は特に減価消耗が早いし、中華人民共和国から日本への運送の場合、船荷証券の到着は運送品の到着よりもかなり遅れるので、船荷証券の到着を待って引渡しをしたのでは商取引が成り立たない事態もあり得る。原告は、このような実情にある取引を数多く取り扱い、本件各船荷証券を受領した時点では既に運送品が引き渡されていて運送品引渡請求権を行使することができないという事情を熟知していたものであり、このような事態を予想しながら、大市物産株式会社の信用を頼りに信用状を発行したものであるから、その資力や経営状態に配慮すべきであった。

したがって、原告が大市物産株式会社の倒産によって債権の回収ができなくなったのは、原告が大市物産株式会社の資力や経営状態に関する判断を誤ったか、その点に関する注意を怠ったことに起因するものであり、原告が被った損害は主として原告自身が損害の発生防止及び軽減のための適切な手段を講じなかった過失に基づくものである。

2  原告

争う。

第三当裁判所の判断

一  準拠法について

本件各船荷証券と引換えに運送品を引き渡すべき義務の不履行による損害賠償責任に関しては、本件(大連船積)各海上物品運送契約及び本件(上海船積)海上物品運送契約の当事者の意思に従い準拠法を決定すべきところ(法例七条一項)、≪証拠省略≫によれば、被告は、本件(大連船積)各海上物品運送契約及び本件(上海船積)海上物品運送契約の各荷送人に対し、日本法を準拠法とする意思の下に本件各船荷証券を作成、交付した事実が認められるから、前記損害賠償責任に関しては我が国の国際海上物品運送法が適用される(同法一条)。

二  被告の運送人としての責任について

1  争点1について

前記認定のとおり、被告の代理商(代理店)である大東港運株式会社が、大市物産株式会社又はその代理店三協運輸株式会社に対し、本件各運送品を本件各船荷証券なしにいわゆる保証渡しの方法で引き渡したため、被告が運送人として負う本件各船荷証券の所持人に対する右各運送品引渡義務は、履行不能となったが、大東港運株式会社は被告の代理商(代理店)として右行為を行ったものである。

運送人は、自己又はその使用する者が運送品の引渡しにつき注意を怠ったことにより生じた運送品の滅失等について損害賠償責任を負うが(国際海上物品運送法三条一項)、右にいう運送人の「使用する者」とは、運送人が自らの債務の履行のために使用する者、すなわち、履行補助者を意味し、運送人と雇用関係にある狭義の履行補助者に限られず、下請人、代理商等のいわゆる履行代行者も含まれるものと解するのが相当である(同法二〇条の二第二項、四項、五項にいう「運送人の使用する者」とは異なるものと解するのが相当である。)。したがって、本件において、運送人である被告は、代理商(代理店)である大東港株式会社が注意を怠ったため右のとおり本件各運送品を引き渡したのであるとすれば、これにより生じた損害の賠償責任を免れないところ、大東港運株式会社は、本件各船荷証券と引き換えではなく、本件各船荷証券を所持していない大市物産株式会社に本件各運送品を引き渡しており、この引渡しをもって被告の本件各船荷証券の所持人に対する本件各運送品引渡義務を免れることはないから、被告は右債務の履行不能による損害賠償責任を負うものというべきである(国際海上物品運送法一〇条、商法五八四条)。

2  損害額について

(一) 原告は、大市物産株式会社が原告に対する荷為替手形の手形金相当額等の費用償還債務を履行しないまま平成七年三月二九日破産宣告を受けたため、損害を被ったが、被告の前記債務不履行による損害賠償の額は、荷揚げされるべき地及び時における運送品の市場価格によって定めるべきである(国際海上物品運送法一二条の二第一項)。

(二)前記認定によれば、別紙船荷証券目録一及び二記載の各運送品は平成七年二月八日、同目録三記載の運送品は平成七年二月六日、同目録四記載の運送品は平成七年三月七日にそれぞれ荷揚げされたものと認められるところ、≪証拠省略≫によれば、当該各時点における右各運送品の市場価格は、別紙船荷証券目録一記載の運送品については船荷証券の付属書類である商業送り状に記載された五万六二八七ドル七二セントを平成七年二月八日の為替レート一ドル一〇〇円四〇銭で円に換算した五六五万一二八七円を下回らないこと、別紙船荷証券目録二記載の運送品については船荷証券の付属書類である商業送り状に記載された一三万五一六七ドル七七セントを平成七年二月八日の為替レート一ドル一〇〇円四〇銭で円に換算した一三五七万〇八四四円を下回らないこと、別紙船荷証券目録三記載の運送品については船荷証券の付属書類である商業送り状に記載された八万八四四六ドル八一セントを平成七年二月六日の為替レート一ドル一〇〇円七〇銭で円に換算した八九〇万六五九三円を下回らないこと、別紙船荷証券目録四記載の運送品については船荷証券の付属書類である商業送り状に記載された八万五七九五ドル五九セントを平成七年三月七日の為替レート一ドル九三円八五銭で円に換算した八〇五万一九一六円を下回らないこと、したがって、本件各運送品の市場価格合計額は、右各金額の合計額である三六一八万〇六四〇円を下回らないことが認められる。

(三) 弁論の全趣旨によれば、原告は、破産者大市物産株式会社の破産事件(大阪地方裁判所平成七年(フ)第五四六号事件)において荷為替手形の手形金相当額等の費用償還請求権として、破産宣告日の為替レートで円に換算した三二八七万六二三九円を破産債権として届け出ていたが、平成八年六月一一日に右破産債権につきその二〇パーセントに相当する六五七万五二四八円を中間配当として受けたことが認められる。

原告は、右のとおり中間配当を受けた全額を前記三六一八万〇六四〇円に充当し、その残額である二九六〇万五三九二円の一部である二八九四万四五一二円の支払を損害賠償として請求するものであり、原告の右請求は理由がある。

三  争点2について

前記認定によれば、別紙船荷証券目録一及び二記載の各運送品は平成七年二月八日東京港に到着し、同目録三記載の運送品は平成七年二月六日大阪港に到着し、同目録四記載の運送品は平成七年三月七日大阪港に到着したものであるところ、原告は、平成七年二月一六日別紙船荷証券目録一ないし三記載の各船荷証券を入手し、同年三月二〇日同目録四記載の船荷証券を入手したことが認められる。そして、たしかに、原告は、平成八年一月一七日に被告に損害賠償を請求するまでの約一一箇月間、本件各船荷証券に基づく本件各運送品の引渡しを請求しなかったものである。

しかし、右事実をもってしても、本件各船荷証券所持人である原告が荷為替手形の手形金相当額等の費用償還請求権の支払を受けられない場合に本件各運送品の引渡しを受けられなかったことによる損害賠償請求権を放棄する意思であったと認めるに足りないし、他に右放棄の意思を認めるに足りる証拠はない。また、既に平成七年三月一六日には大市物産株式会社について破産宣告申立てがされ、同年三月二九日には破産宣告がされたのであって、この事実を併せて考えると、原告が右のとおり約一一箇月間本件各船荷証券に基づく本件各運送品の引渡しを請求しなかったことを理由に、原告が長期間経過後に損害賠償請求権を行使することが権利の濫用に当たり、あるいは信義則に反するということはできない。

四  争点3について

別紙船荷証券目録一及び二記載の各運送品は平成七年二月八日東京港に到着し、同目録三記載の運送品は平成七年二月六日大阪港に到着し、同目録四記載の運送品は平成七年三月七日大阪港に到着したものであるところ、原告は、平成七年二月一六日別紙船荷証券目録一ないし三記載の各船荷証券を入手し、同年三月二〇日別紙船荷証券目録四記載の船荷証券を入手したが、既に同年三月一六日には大市物産株式会社について破産宣告申立てがされ、同年三月二九日には破産宣告がされており、これによると、原告が別紙船荷証券目録一ないし三記載の各船荷証券を入手してから一箇月後には大市物産株式会社について破産宣告の申立てがされ、別紙船荷証券目録四記載の船荷証券はその申立て後にこれを入手するに至っていることが明らかであって、これらの事実に照らして考えると、原告が長期間に渡って損害の発生防止及び軽減のための適切な手段を講じないまま放置したとまでいうことはできず、被告の過失相殺の抗弁は、その前提事実の証明を欠くといわざるを得ないから、これを採用することができない。

また、被告は、原告が運送品の種目によっては保証渡しの方法による引渡しが常態化していることを熟知しつつ、大市物産株式会社に信用状を開設した以上、本件の損害は原告の同社に対する信用評価の誤りに起因すると主張するが、保証渡しの方法による引渡しによって、運送人が船荷証券の所持人に対する運送品引渡義務を免れることがないのは前述のとおりであり、保証渡しに伴うリスクは、運送人が負うものというべきであるから、被告の前記主張は採用できない。

五  結論

以上の次第であって、原告の請求はすべて理由がある。

(裁判長裁判官 高世三郎 裁判官 小野憲一 男澤聡子)

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